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不活化ポリオワクチン接種について

不活化ポリオワクチン接種について

*不活化ポリオワクチン接種を希望される方は下記を必ずご覧下さい。
 お時間のない方は最低限、「不活化ポリオワクチン接種 を希望される方へ」をご覧になって、ご来院ください。

1.ポリオワクチンの必要性

急性灰白髄炎(ポリオ)はポリオウィルス(1型・2型・3型)の中枢神経への感染により引き起こされる急性ウィルス感染症で、一般的には、「脊髄性小児麻痺」と呼ばれることも多い病気です。感染して麻痺が起こると、筋力低下・筋緊張低下及び筋肉萎縮が後遺症として残ります。

日本では1981年以降、野生株(自然に流行しているもの)によるポリオの発症例は報告されていません。しかし世界中ではまだ、パキスタン・アフガニスタン・インド・ナイジェリアの4ヶ国で流行が続いていて、これらの国から日本にウィルスが持ち込まれ、感染する危険性はゼロではありません。実際、これらの4ヶ国の周辺では、繰り返しポリオの流行が起こっています。

ポリオに感染した場合、治すための有効な治療薬はありません。ポリオに対する唯一の対処方法は「予防」となります。そのため、世界中の国で現在でも、ポリオワクチンが接種されています。

2.ポリオワクチンの種類

世界中で使われているポリオワクチンには、ウィルスは生きているものの毒性を弱めた生ワクチン(OPV)と、ウィルスを化学処理して感染性や病原性をなくした不活化ワクチン(IPV)があります。

日本では3種類(1型・2型・3型)のウィルスを弱毒化・混合した経口生ワクチンが定期予防接種として認可・実施されています。通常は、生後3ヶ月以上90ヶ月未満(標準的な接種時期は生後3ヶ月以上18ヶ月未満)に、41日以上間隔をあけて2回接種することと定められています。

一方、世界多くの国では、すでに生ワクチンから、不活化ワクチンへと移行しています。現在経口生ワクチンを接種しているのは、日本と北朝鮮・モンゴル・中東・アフリカ・太平洋諸島・中南米のみで、いわゆる「先進国」に該当する国で生ワクチン接種を行っているのは日本だけというのが実情です。(ポリオの会

①経口ポリオワクチン(OPV)

【利点】

公費による接種となります。万が一、接種に伴い健康被害が生じた場合、国が認定すれば、予防接種法に基づき、「予防接種健康被害救済制度」により各種補償が受けられます(定期接種年齢の範囲を越えていた場合は、「独立行政法人医薬品医療機器総合機構法」が適用されます)。 

経口投与のため、注射に伴う痛みや副反応(アナフィラキシー、発赤・腫れ、神経損傷など)がありません。

【問題点】

下痢の際には接種ができません。
ワクチンに関連した麻痺が疑われながら、国の認定が得られず、補償を受けられない症例があります。
免疫(抵抗力)に問題のある人には接種ができません。家族に同様の人がいる場合や家族に妊婦がいる場合も注意が必要となります。
欧米では2回接種では接種未完了と判断されることがあります(合計3~4回接種が必要)。

生ワクチンは、ウィルスの毒性を弱めたものを使っているため、ワクチンからポリオに感染する危険性があります。
これをワクチン関連麻痺性ポリオ(VAPP)と言います。日本で最近みられるポリオは、全てVAPP です。経口接種された生ワクチンは腸で増え、約1ヶ月便中に排出され続けます。このため、ワクチンを飲んだ子供だけでなく、家族への二次感染も報告されています。
特に、1975年~1977 年生まれの両親の場合、1型ウィルスに対する抗体が低いことがわかっていて、二次感染の危険性に留意しなくてはなりません。
ポリオによる健康被害と認定されている患者数は、2008年現在で138名です。国立感染症研究所ポリオワクチンに関するファクトシート 2010年7月7 日版によれば、1981年以降ポリオと認定された患者は25名ですが、ワクチン株由来の患者が届出対象となったのは2006年で、VAPP の実数ははっきりしていません。
同ファクトシートによれば、最近5年間の予防接種後副反応報告の集計によるポリオワクチン接種後の麻痺例は、2008年度7例(暫定値)、2007年度4例、2006年度3例、2005年度1例、2004 年度3例、2003年度2例となっています。2010年度は2名(神戸市のワクチン未接種者と、藤沢市で1回目の接種後にVAPP を起こしたと報告されています。2011 年度は7月末までで東京都1名の報告があります。
VAPP の頻度は、生ワクチンの添付文書によると、約486万接種あたり1人、とされていますが、1971~2000 年の日本における危険度は約200万接種あたり1人という報告もあります。
WHO の報告によれば、生ワクチンにより出生100 万人あたり2~4人VAPPが発生するとされています。アメリカのCDC(米国疾病予防管理センターは、2000 年1月に、経口生ワクチンだと約240 万人に1人、ワクチンによるポリオ発症が見られるため、「経口生ワクチンはもはや推奨しない」という文書を公表し、移行期を経て全て不活化ワクチン化しました。
日本でも2001年に不活化ワクチンの申請が行われましたが、2005 年に申請が取り下げられました。
現在はDPTとあわせた4種混合ワクチンの治験が進んでいますが、承認され、実際に使えるようになるにはあと1~2年必要です。不活化ワクチン単独の導入も準備が始まりましたが、認可には同程度の時間がかかると思われます。
なお、経口生ワクチンの投与が続く限り、保育園や幼稚園などの日常環境から感染する(友達からうつる)リスクは、抗体が十分にできるまで(生ワクチン・不活化ワクチンともに2~3回接種後まで)は、ゼロにはできません。 

②不活化ポリオワクチン(IPV)

不活化ワクチンは主にポリオの流行していない国・地域で使われる注射のワクチンで、ポリオの発症を予防するには効果的なワクチンです。不活性ワクチンに含まれるウィルス成分は、製造過程で病原性(毒性)を完全になくしています。

3.不活化ポリオワクチン(IPV)について

【利点】

軽い下痢や発熱を伴わない上気道炎ならば接種ができる。
ワクチン関連麻痺(VAPP)の危険がない。
免疫に問題があっても、接種可能なことが多い。

【問題点】

定期予防接種にはならないため、接種は有料となる。日本では未承認の薬のため、万が一接種に伴い健康被害が生じた場合、予防接種法に基づく「予防接種健康被害救済制度」による各種補償は受けられない(厚労省HP参照)。「独立行政法人医薬品医療機器総合機構法」も適用されないがワクチン輸入商社〈Monzen〉による補償制度は整備されています。
筋肉注射のため、注射に伴う痛みや副反応(アナフィラキシー・発赤・腫れ・神経損傷など)の可能性があります。

抗生剤のネオマイシン・ストレプトマイシン・ポリミキシンBでアナフィラキシーを起こした場合は、接種できません。

【副反応】

治験中に見られた副反応は次のとおりです。

患者395人に対し、
注射部位の発赤0.7-2.4%、痛み0.7-34%、腫れ0.4%

小児205人に対し、
接種後38.1℃以上の発熱が1回目10%、2回目18%、3回目7%

市販後調査

   アナフィラキシー 0.01%以下
   発 疹・蕁麻疹 0.01%以下

4.不活化ポリオワクチン(IPV)についての考え方

現在、日本においてOPVにより年間数例の生ワクチンウィルスによる麻痺の患者(VAPP)がでています。しかし、自然感染のポリオの発生はこの10年間1例もありません。いわゆる「先進国」の中でOPVを使用しているのは日本だけです。2010年に報道されているVAPPは神戸市と藤沢市の2例です。そのため、OPVを経口接種することにためらわれている患者も多く、当院ではOPV投与をしないようにという話をしています。そこでIPV接種について注意深く検討した結果2011年3月より日本国内未承認の不活化ポリオワクチンを個人輸入することになりました。

5.当院の不活化ポリオワクチン(IPV)接種について

ワクチン名:Imovax Polio

製造元:Sanofi Pasteur(フランス)

注射部位:太もも(右または左)

輸入商社:MONZEN

6.接種までの流れ

十分ご納得頂いてからのIPV接種となります。初めての方には2度ご来院頂くため、ご面倒をおかけしますが、患者さんにきちんと自己決定して頂くための時間と位置づけています。ご了承下さい。

①来院前

まず、このページをよくお読みください。また、ポリオの会のホームページ及びMONZENもお読みいただければより理解が深まると思います。特に、接種スケジュールや生のポリオワクチンとIPVとの違い、副作用、補償制度、接種前後の注意事項などをご確認ください。難しいところもありますので、ご不明の点は診察の際にお聞き下さい。

他の重要なワクチン(ヒブワクチン、肺炎球菌ワクチン、B型肝炎ワクチンなど)についての記載もお読みください。
他の予防接種の接種状況より、IPV接種の前にそれらの予防接種を先に行うこともあります。受診時に説明させていただきます。

特に、B型肝炎ワクチンはとても重要なのですが、残念ながら大多数の方がその存在を知らないばかりか、かかりつけの医療機関でも接種の勧奨を受けていません。他の人からの感 染という点からいえば、IPVとは比べ物にならないほどの感染の確率は高いので、全ての方の接種をお勧めしています。B型肝炎ワクチンは、おたふくかぜやみずぼうそうのワクチンのように日本製で有料ですが、国の認可を受けたワクチンです。

②初診の方 – 診察のご予約

ワクチンは個人輸入かつ未承認であるため、初めての接種の方には、まず医師からワクチンについての利点・欠点や補償の件などを含め、お話をさせていただき、納得して頂いてからのご予約となります。そのため、午前中は11時まで、午後は5時までにご来院ください。ご予約は不要です。ご質問や疑問点があればこのときご遠慮なくお聞きください。

*お持ちいただくもの
母子手帳・保険証は必ずお持ち下さい。また、かかりつけ医師がいる場合には、スムーズに進めるため、今までの病気やワクチン歴などが書かれた紹介状をお持ちください。

*当日は診察と接種のご予約のみとなりますが、子どもさんの診察をしますので、必ず同伴してお越しください。

③当院での受診歴のある方(過去1年以内)や、2回目以降の方

電話での接種予約が可能ですので、お問い合わせ下さい。

④接種当日

こちらの問診票を書いて頂きます。接種当日も診察を行います。疑問点があれば遠慮なく医師にお尋ねください。母子手帳・保険証をお持ちください。

7.不活化ポリオワクチン(IPV)接種のスケジュール

接種のスケジュールは下記のとおりです。
他の予防接種との接種間隔など、患者さんにより異なりますので、相談させて頂きます。

①IPV接種スケジュール(合計4回接種)

1回目 生後2ヶ月
2回目 生後4ヶ月
3回目 2回目接種終了後、6~14ヶ月後
4回目 4~6歳

②上記の接種スケジュールより遅れた場合(合計4回接種)

1~3回目 4週間以上の間隔で3回接種
  4回目 4~6歳

③IPV2回・OPV2回接種の場合

1回目 生後2ヶ月
2回目 生後4ヶ月
3回目 2回目接種終了半年後以降にOPVを2回

④経口ポリオワクチンを1回接種した場合(経口ポリオワクチンと合わせて合計4回)

1回目 経口ポリオワクチン接種から8週間以上経過した後
2回目 1回目の8週間後
3回目 4~6歳

万が一障害1 級・2級に分類されるような重篤な副反応や死亡などの健康被害が発生した場合、輸入商社による「輸入ワクチン副作用被害救済制度による補償を受けることができます(ただし、民事裁判により、病院・医師の無過失が認定される必要があります)。

⑤1975~1977年生まれの方

1975年~1977年生まれの方は、定期接種で2回接種していてもポリオの免疫が低い方が多いことが判明しています。お子様や、周囲の方がポリオ生ワクチンを接種する前に2回追加することをお勧めしています。

8.不活化ポリオワクチン(IPV)接種前後の注意事項

①接種前の注意事項(以下の場合には予防接種を受けることができません)

・明らかな発熱(37.5℃以上)がある場合や重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな場合

・予防接種液の成分(抗生剤のネオマイシン・ストレプトマイシン・ポリミキシンB)にアレルギーがある場合

・その他、医師が不適当な状態と判断した場合

②接種後の注意事項

・接種後30分間はアナフィラキシー(アレルギー反応)の有無を観察する必要があるので、院内で待機してください。

・接種後に高熱やけいれんなどが起こった場合は、診察が必要なのでご来院ください。

・接種当日の入浴は可能です。