「ポリオワクチン接種」についての私の考え
生ポリオワクチン接種後に小児麻痺になる患者さんがここ10年で10人ほど発生しています。最近では、神奈川県内において1名の患者の発生がみられたため、現在のところ、生ポリオワクチン(OPV)については当院では勧めておりません。
■日本小児科学会の見解は以下の通りです(日本小児科学会のHPより要旨抜粋)。
1 経口生ポリオワクチン接種後に小児マヒ(VAPP)が起きる。
2 この患者さんから検出されたポリオウイルスはすべてワクチンに原因がある。
3 副作用を起こさないワクチン(IPV・不活化ポリオワクチン)を導入している国がある。
4 日本でいまだに生ポリオワクチンによる副作用が起きるのは重大な問題である。
5 日本小児科学会は解決に向けて最大限の努力をしている。
6 既に、副作用が起きない不活化ポリオワクチンを導入している国があることは承知している。
7 いま国産のIPV(不活化ポリオワクチン)を作っているが、承認までは時間が必要。
8 ポリオワクチン接種で抗体の維持を図る必要がある(ワクチンはみんなで接種してこそ効果があります)。
9 ごくまれな小児麻痺の副作用があるとしても生ポリオワクチンを勧める必要がある。
10 以上のことを日本小児科学会諸氏にはご理解いただき、生ポリオワクチンを勧めてほしい。
■私の考え
結局のところ、小児科学会は副作用がない国産の不活化ポリオワクチン開発までは、接種後の小児マヒのリスクがあっても、生ポリオワクチンを広く勧めなさいという主張です。
なぜ不活化ポリオワクチン国産化まで、生ポリオワクチンで日本の子どもが我慢して、たとえ数人の子供でも接種後のマヒになるのを放置しなくてはいけないのでしょうか。
それよりも国産の不活化ポリオワクチンができるまでは一時的でも海外で実績のある不活化ポリオワクチンを輸入すれば、国民は安心してワクチン接種を積極的に行い、集団としての抗体維持に協力すると思われます。
現在、小児科学会有志やポリオの会などとともに、臨時に海外の不活化ポリオワクチンを輸入する運動を進めています。
* 参考までに
《副作用のない不活化ワクチンだけを接種する国と地域》
アイスランド・カナダ・チェコ
ベルギー・アイルランド・韓 国
デンマーク・ポーランド・アメリカ
キプロス・トルコ ・ポルトガル
アンドラ・ギリシャ・ドイツ ・香港
イギリス・クロアチア
ニュージーランド・モナコ
イスラエル・サンマリノ・ノルウェー
ラトヴィア・イタリア・スイス
パラオ・リトアニア・エストニア
スウェーデン・ハンガリー
ルクセンブルク・オーストラリア
スペイン・フィンランド・ロシア
オーストリア・スロヴァキア・フランス
オランダ・スロヴェニア・ブルガリア
台湾、シンガポールでも、DTaP/Hib/IPV(5 種混合ワクチン) がよく使われています。
医療法人社団渡部クリニック
院長 渡部 創