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子宮頸がんワクチンについて【2023.3】

子宮頸がんワクチンについて

2023.4.1から子宮頸がんワクチンの9価ワクチンシルガード)が公費(無料)接種可能となります。対象は小学6年から高校1年までの女性とキャッチアップ接種対象である1997.4.2-2006.4.1生まれの女性です。(2023年3月時点)。今回は子宮頸がんワクチンについてのお話をしたいと思います。

子宮頸がんについて

 子宮頸がんは日本では年間1万人を超える女性がかかっており年間3000人弱の女性が亡くなっております。”がん”は年齢が高くなってからかかるものだと思われていますが、子宮頸がんの罹患者は20-30歳台で急激に増加し30-40歳台で最も多くなることが分かっており、若い人が多くかかってしまうがんの一つであると考えられます。

もちろんこれは子宮頸がん検診の開始が20歳であることも要因ですが、子宮頸がんのリスクであるHPV(ヒトパピローマウイルス)感染してから癌化するまでに数年〜10年かかることも関係しております。もう一つの大きなリスクは喫煙と言われ、非喫煙者に比べて2倍のリスクが報告されています。

子宮頸がんの治療の一つである手術の中でも早期であれば、子宮円錐切除、レーザー治療という子宮を残すような治療もあります。ただし早産のリスクや妊娠への影響が日本産科婦人科学会に提言されております。

加えて検診で異形成といった診断となると数カ月後の再検査を必要とされ、その後も異形成が続けば再検査となる可能性もあり要経過観察にも負担が大きいと考えられます。

HPVワクチンについて

 HPVの主な感染は性行為であるので、この前にワクチン接種を行うことで感染を抑制し子宮頸がんにかからないようにするのが目的です。HPVには型がたくさんありますので性行為を経験した後でも他の型を予防する効果も期待されておりますのでキャッチアップ接種も有効性があるわけです。素晴らしいのはがんの発生を示す指標で集団寄与危険割合(PAF)というものが国際的に評価されており、100%!!となっています。つまり集団でHPVワクチンにより感染を抑制できれば、癌の撲滅も夢ではないと期待されています。

 私も長くがん治療を行い、たくさんのがん患者さんに関わってきました。中でも、年代も若く、お子さんが小さい、まだ両親もご健在のような状況である中で、手術・放射線治療・抗がん剤治療を受けることになる子宮頸がん患者さんは非常に心苦しい状況であり、記憶が強く残っております。このようながんを撲滅できるのも期待されているというワクチンがあるのは非常に素晴らしいと考えております。

 今回公費接種の対象となる9価ワクチン(シルガード)はHPV未感染の女性ではほぼ100%の感染予防となると報告されております。また異形成を減らす効果の報告もあり、前述した検診後の要経過観察の負担軽減も期待されています。もちろん最終的には妊孕性温存に繋がると考えられており世界での少子高齢化への対策の一つに位置づけられています。

日本の現状について

 日本では2013年4月から定期接種開始となりましたが2ヶ月後に積極的な接種が差し控えられ2022年4月の再開まで接種率は極めて低率となっています。2021年に公表された世界31カ国における子宮頸がんの罹患数と死亡数は日本のみ増加傾向となっております。他にも様々な要因が考えられるとは思いますが、がんの統計は数年遅れて判明しますのでこの傾向がさらに増加しないことを願うばかりであります。また積極的な接種を行ってすでに8−9割の接種率を達成しているオーストラリアやイギリスなどの国は、子宮頸がんの減少のみならずその前がん病変についても減少が報告されております。

副反応について

 副反応問題のためわずか2ヶ月で積極的な接種が控えられました。その後いくつかの検討がされました。厚生労働省研究班(祖父江班)が青少年を対象にしてその多様な症状についてHPVワクチン接種有り無しも含めた研究を行い、HPVワクチン接種と接種後の症状には因果関係が無いと結論づけたもの、HPVワクチン接種の約338万人の追跡調査による長期の副反応追跡調査、さらに名古屋市の約7万人の女性を対象にしたNagoya studyがあります。特にNagoya studyは副反応を訴える方と支援団体の依頼から始まったものでその支援団体からの意見を取り入れての研究であることや3万人という多数のデータ収集ができたことは高く評価すべきも研究だと思います。また現在では副反応の発生時の体制もとても整備されております。世界でもこのワクチンの安全性は保証されております。

 副反応の無い薬や治療はありません。ただ日本はHPVワクチンは積極的接種の中止を経験して日本人を対象とした研究を行ったことでより安心して打てる状況にあると思っています。

 横浜市では現在9価ワクチンの接種のお知らせを6月を目処に準備中とのことです。現行の2,4価用の予診票でも9価ワクチンを接種可能です。当院では4月から原則9価ワクチンを3回接種で予約を受付ます。ホームページのワクチン予約よりよろしくお願いします。なお現在1,2回接種済な方へのその後の9価ワクチン接種や9価ワクチンの2回接種、これまでの4価ワクチン接種、男性へのHPVワクチン接種などについては電話でのご相談としております。