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小児用肺炎球菌ワクチン・ヒブワクチンの接種について~同時接種の考え方~

小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンの接種について~同時接種の考え方~

~同時接種についての考え方~

ヒブワクチン(Hib)と小児用肺炎球菌ワクチン(PCV7)は4月1日より再開となりました。厚労省はこれらのワクチン接種と今回の一連の死亡事例とは直接の因果関係はないという結論を出しました。ですが、まだ不安をお持ちの方も多いと思いますので、以下私の考え方を述べます。

(1) Hibは1990年代前半から20年以上、PCV7は2000年から10年以上、世界中で広く接種が行われています。Hibは約2億人以上、PCV7も数千万人に接種されています。ですから、基本的に両方とも安全なワクチンと位置付けられています。

(2)米国ではPCV7導入後2年間で3150万人への接種が行われ、117人が接種後に死亡しましたが、ワクチン接種が原因と確定したケースは無く、その後も接種が継続されています。他の国にも同様の調査があり、結論は同じで、接種は継続されています。

(3)一方、これらの細菌によって起こる病気としては、たとえば細菌性髄膜炎では、日本で年間ヒブによって約600人余り、肺炎球菌では200人余りが発症しています。その内50%は0歳で、80%は2歳未満で発症しています。また、全体の1割程度のお子さんが命を落とし、2~3割のお子さんが重い後遺症で苦しんでいます。ただ、発症数や死亡数などはもっと多いという報告もあります。

(4)この二つのワクチンで、それらの病気がほぼ完全に防げることが証明されています。

(5)同時接種について述べます。HibとPCV7の同時接種は10年以上世界中で実施されています。さらに、他のワクチンとの同時接種も普通に行われています。というよりも、実は、同時接種を広く行っていない国は世界中でほとんど日本だけというのが実情です。

(6)日本においていわゆる同時接種(混合接種とも考えられる)は、三種混合ワクチン(DPT)とMRワクチンしかありません。DPTは、百日咳、ジフテリア、破傷風の三つのワクチンですが、それぞれ単独のワクチンがないため、混合ワクチンとして以前から接種されています。MRワクチンも、麻疹、風疹の二つのワクチンの混合ワクチンとして接種されています。これらDTPやMRワクチンについては、みなさん抵抗なく接種されていると思います。ですから、HIBとPCV7の同時接種についても、同時接種というだけで恐れる必要はなく、HIBとPCV7の混合ワクチンが日本にないために、同時接種となっているとお考えになっていただければよいと思います。

(7)世界的にみると、同時接種はアメリカで1970年代から行われるようになり、1985年には推奨勧告が出ています。1995年には、WHOから「現在、予防接種拡大計画で使用されている全てのワクチンは同時接種しても安全かつ効果がある」として積極的に推奨され、アメリカではさらに2002年の勧告で「個人が受けるべき全てのワクチンが同時接種されることは極めて重要」とされました。現在、世界中で広く同時接種が実施されています。

また、外国では接種方法は、大腿部の筋肉注射が主ですが、日本では上腕の皮下注射です。ですから、外国は接種回数が少なく、かつ、痛みが少なく、接種後の腫れも少ない接種方法ですが、日本は接種回数が多く、また、痛みや腫れも多い接種方法ですし、無料で接種できるワクチンが少ないという違いがあります。

(8)生後2~6か月頃のワクチン接種では、例えばアメリカでは8種類の同時接種(Hib、PCV、三種混合、ポリオ、B型肝炎、ロタウイルス)が、台湾では(米国の8種類に加えて無夾膜型インフルエンザ桿菌の計9種類の同時接種が実施されています。日本でも現在、やっと四種混合ワクチン(三種混合と不活化ポリオワクチン)の臨床試験がおこなわれています。

(9)Q&A

【Q】ワクチン接種直後の死亡なら、その死亡原因はワクチンではないのでしょうか?

【A】実は因果関係の判断はとても難しいのです。たとえば、我が国では乳児突然死症候群(SIDS)という病気で年間300人以上の健康な乳児が突然死しています。この一つの病気だけで1日に一人以上の健康乳児の突然死が起きているのです。公費接種が始まって2~3か月経ちますが、その間にも全国でSIDSは発生しており、当然のことながら、ワクチン接種後のお子さんにも発生します。今回の死亡原因はこのSIDSだった可能性もあります。本当にそうかどうかはまだ分かりませんが、この病気の頻度からみて充分にあり得ることでしょう。もしそうだとすれば、今回の出来事は大変に不幸な偶然の重なり、ワクチンにとっては「無実の罪」ということになります。実際、(2)に述べたように、今回のようなケースは世界中で報告されていますが、詳細に検討するとSIDSやその他の疾患での偶然の死亡だろうと結論されています。

【Q】因果関係がないと言われても、今後も本当に大丈夫なのか、やはり心配です。

【A】仮に万が一、今回の件でワクチンと因果関係があったとしても、ワクチンで命を落とすお子さんより、ワクチンをせずに髄膜炎になって命を落としたり後遺症が残ったりするお子さんの方がずっと多いのは間違いありません。ということは、「大きな副作用がないワクチン接種の危険性」と、「既に判明しているワクチンを打たずに髄膜炎にかかる危険性」の両方をはかりにかけて考えていただければと考えます。

(10)同時接種の副反応のことを考えてみます。

複数ワクチンの同時接種を行った場合、副反応の頻度は、ワクチンの単独接種で起こる場合と基本的に変わらないとされています。その場合、複数を同時に打つのですから、副反応が生じる確率はそれぞれのワクチンの場合の足し算となると思われますが。例えば、Aワクチンで10人に1人熱が出て、Bワクチンで10人に1人腫れが出るとします。この二つを同時に接種すると、10人に二人が副反応を起こすわけです。この例では取りあえずは2倍の確率です。3種類を同時に打てば、もっと増えるはずです。でも、現実にはそんなには増えません。

その理由は、接種後にたまたま起こる紛れ込み事故(本当はワクチンとは全く無関係ですが、続けて生じたため一見すると因果関係あるように見える有害な事象)の確率は、接種回数が減る分、半分以下に減るからです。あるワクチンを打ってその後の1週間で熱が出たり、そのほか何か有害なことが偶然起きる確率は、二つのワクチンを別々に打てば2週間分の可能性があり、二つを同時に接種すれば1週間分の可能性だけとなります。ですから、3つ同時に接種すれば偶然の有害事象の発生は1/3に減るわけです。数多くまとめて一度に打った方が紛れ込み事故は減るということです。

最後に、副反応が出た場合の被害救済についてですが、公費接種と自費のワクチンを同時に接種した場合には、自費ワクチンのみの単独接種にした場合に比べて、万が一の場合の救済額が大きくなります。これは法律上の仕組みとしてそうなっているものです。つまり、万が一の時には同時接種をしていた方が安心と言えます。

以上、同時接種についての考え方を書きましたが、難しい点、理解しにくい点がおありのことと思います。ご不明の点、ご心配な点は遠慮なく、診察時にお尋ねください。よりよい予防接種の在り方についてこれからも皆さんと一緒に考え、実行していきたいと思っています。