予防接種について
予防接種ってどうしてやるの?
予防接種は、ワクチンを注射することにより、免疫(抗体)をつくって、病気に対する抵抗力をつけるために行います。
病気の発生を予防したり、症状を軽くすることが目的です。
予防接種は、天然痘やポリオの発症・流行防止につながり、感染症による死亡減少に重要な役割をはたしてきました。
予防接種を定期的に受けることにより、本人のみならず社会全体への病気の蔓延を防ぐことからも予防接種を受ける必要があります。
予防接種は、普段とかわらずに元気で、体温が37.5℃未満であれば、接種することができます。
できるだけ、集団保育の始まる前までには、予防接種を済ませましょう。
もし、かぜ気味だったり、アレルギーがあるときなどは、医師にご相談ください。
どんな種類がありますか?
2012年9月から当院ですべて接種できるようになりました。
①不活化ポリオワクチン(IPV)
小児マヒにならないようにするワクチンです。
不活化ワクチンは主にポリオの流行していない国・地域で使われる注射のワクチンで、ポリオの発症を予防するには効果的なワクチンです。不活性ワクチンに含まれるウィルス成分は、製造過程で病原性(毒性)を完全になくしています。2012年9月から不活化ポリオワクチンが日本でも導入されました。
2012年9月からの国内用単独不活化ポリオワクチン(IPV)ーソーク株ーは今まで当院で接種していた海外用不活化ポリオワクチン(IPV)ーソーク株ーと中身は全く同じですので安心して接種ください。海外では5回以上接種が標準になってきています。
2015年12月からの四種混合ワクチン(三種混合ワクチンと不活化ポリオワクチンのソーク株の混合ワクチン)が販売されました。
当院ではソーク株の四種混合ワクチンをお勧めしています。
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②BCGワクチン
結核にならないようにするワクチンです。
生後5ヶ月~12ヶ月未満が対象です。今まで生後6か月未満までの接種が1歳未満になりました。
ヒブワクチンや小児肺炎球菌ワクチン、DPT接種を少なくとも各2回以上終了後にBCG接種をすることをお勧めします。
日本では一番早く接種しなさいと保健所で指導されることが多いのですが、たとえばアメリカ合衆国ではBCGワクチンの接種はありませんし、欧州諸国ではハイリスクの家族以外の接種以外を強制していない国が多くあります。ですから、もし長期間アメリカ合衆国に居住する予定があれば、BCG接種をするかどうか検討されたほうがいいかもしれません。理由は、BCG接種をしているとツベルクリン反応が陽性のため結核と疑われ、レントゲン撮影や抗結核剤服用などの処置もされることがあるからです。
詳しくはご相談ください。
③四種混合ワクチン
ジフテリア、百日せき、破傷風、ポリオの4つの病気にならないようにするワクチンです。以前は三種混合ワクチンがありましたが現在は不活化ポリオワクチンと一緒になって四種混合ワクチンになりました。
Ⅰ期(初回)は生後3ヶ月になったらすぐに1回目を接種します。その後は4週間の間隔で、3回接種します。
Ⅰ期(追加)は、3回目の接種6ヵ月後1回接種します。
現在、ヒブ、小児用肺炎球菌、四種混合ワクチンの追加接種は、1歳のMR、おたふく、水痘ワクチン接種後、1歳1カ月での接種をおすすめしています。
しかし、百日咳ワクチンの抗体価は1歳過ぎの追加接種の計4回接種では低下してします。できれば、5歳の年長さんの時に同じように不活化ポリオワクチンの抗体価も低下するので百日咳ワクチンと不活化ポリオワクチンの2つの入った4種混合ワクチンの追加接種をしてください。残念ながら自費になります。
Ⅱ期は、11歳~13歳未満の間に2種混合(ジフテリアと破傷風)ワクチンを1回接種します。
④はしか風しん混合ワクチン(MRワクチン)
はしか、風しんにならないようにするワクチンです。
2006年4月から、はしか風しん混合ワクチンの2回接種になりました。
Ⅰ期は、1歳~2歳未満が対象です。1歳になったら、MR、おたふく、水痘の同時接種がおすすめです。
Ⅱ期は、5歳~7歳未満の小学校就学1年前から就学前日までが対象です。
どちらかのワクチンを接種している場合、病気になった場合、年齢が対象外の場合には、医師にご相談ください。
MRワクチンは二回接種が必要です。
しかし、成人のほとんどの人はワクチン接種をしていない、または、一回接種だけの人です。是非とも二回接種をしてください。
お知らせのコラムにもMRワクチンについて載せてますのでお読みください。
⑤おたふくかぜワクチン
おたふくかぜにならないようにするワクチンです。
一歳で、はしか風しん混合ワクチン(MR)水痘ワクチンとの同時接種をします。追加接種は3歳に、日本脳炎ワクチンとの同時接種をおすすめします。おたふくかぜは難聴、不妊、髄膜炎の合併症があります。2015年2016年の2年間で359人の子供が難聴になりました。難聴の治療法は有りません。
成人の人もおたふくかぜワクチンの
二回接種をお勧めします。
⑥みずぼうそう(水痘)ワクチン
みずぼうそうにならないようにするワクチンです。
一歳で、はしか風しん混合ワクチン(MR)やおたふくワクチンとの同時接種をします。追加接種は、1回目接種後、3ヶ月以上あけてから接種するのがよいでしょう。
水ぼうそうの合併症は肺炎です。
成人の人も水ぼうそうワクチンの二回接種をお勧めします。
⑦インフルエンザワクチン
インフルエンザにならないようにするワクチンです。
インフルエンザは、高熱が出て重症化した場合、子どもではインフルエンザ脳症、高齢者では肺炎を引き起こす可能性があるので、積極的にワクチンを接種しましょう。
インフルエンザが流行する前の10月~12月に接種します。
13歳未満、受験生、高齢者、初めてのインフルエンザ接種の場合は、原則として、3~4週間の間隔を置いて、2回の皮下接種をすすめています。
とくに、13歳以上や成人の方でも病気の方(とくに心臓・肺・腎障害のある方)は、2回の接種が望ましいです。
健康な方で、毎年接種している方は、1回の接種で大丈夫です。
詳しくは、医師とご相談ください。
なお、2011年秋から、生後6か月以上3歳未満は0.25ml、3歳以上は0.5mlに接種量が増えました。接種回数は、13歳未満は今までと同様、2回接種です。
⑧日本脳炎ワクチン
日本脳炎にならないようにするワクチンです。
Ⅰ期は、3歳(生後6か月から可能です)に1~4週間間隔で2回接種します。最近、千葉県などで3歳未満の幼児に日本脳炎にかかった報告があります。当院では6ヶ月以降に日本脳炎の接種を勧めています。接種券は、早めに接種する場合は保健所に取りに行く必要があります。詳しくは看護師または医師に聞いてください。
I期追加はその1年後の4歳(生後6か月から接種可能です)に、もう一回接種します。
Ⅱ期は9歳からの接種です。
年齢や接種回数などにつきましては、お問い合わせください。
3歳1期接種時に2回目のおたふくかぜワクチンの追加接種との同時接種をおすすめします。
13歳以上の子供さんは今回特例で予防接種予診表と同意書に保護者の署名されたものがあれば保護者同伴が必要なくなりました。詳しくは受付でお聞きください。。
⑨B型肝炎ワクチン
B型肝炎の予防接種については、コチラに詳しい情報を掲載しておりますので、ご参照ください。
なお、現在はB型肝炎ワクチンは、乳児は無料になっています。
⑩肺炎球菌ワクチン
肺炎球菌による肺炎にならないようにするワクチンです。
心臓・肺・腎障害、糖尿病のある方などは肺炎が重症化する可能性があります。
とくに、抗生物質が効きにくい肺炎球菌が増加している今日では、65歳以上の方で上記のような病気をもっている方は接種をおすすめします。
一回の接種により、5年以上の効果があります。
現在、13価と23価ワクチンの肺炎球菌ワクチンがあります。23価ワクチンは65歳以上の方は年齢により接種費用の助成がありますので詳しくは看護師または受付でお聞きください。
⑪HIB(ヒブワクチン)
乳幼児の細菌性髄膜炎を予防するワクチンです。
小児の細菌性髄膜炎の原因の約6割がインフルエンザ菌B型(略して、ヒブといいます)細菌です。感染すれば5%が死亡し、24%は後遺症が残る予後の悪い病気です。
5歳以下、とくに3歳以下がなりやすく、年間の患者数は約1000人です。
乳幼児期に高熱で発症する場合、初めは風邪や胃腸炎と紛らわしく、診断や治療が遅れることが多いこと、抗生物質の乱用により薬が効かないヒブワクチン菌が増加していることが原因です。
そのため、早期の予防接種がとても大切です。
この予防接種をすればヒブワクチンによる髄膜炎は防ぐことができます。
生後2ヶ月より接種可能です。B型肝炎、小児肺炎球菌、ロタウイルスワクチンとの同時接種をお勧めします。初回免疫として3回接種し、追加を1歳1カ月頃に、ヒブ、小児用肺炎球菌、四種混合ワクチンの3つのワクチンの同時接種がおすすめです。ただし、初回の接種年齢などにより、接種の方法に多少の違いがありますのでご相談ください。
2011年2月1日から公費での接種が可能になりました。
肺炎球菌は、小児の感染症の原因菌のひとつです。
感染した場合には急激な経過をたどって重症化します。中耳炎の32%、細菌性肺炎の21%、敗血症の72%、細菌性髄膜炎の20%が肺炎球菌が原因との報告があります。
近年、耳鼻科や小児科での抗生物質の多用・乱用により、ペニシリン耐性肺炎球菌が増加していることも重症化の原因です。
そのため、ワクチンの必要性が高く、小児用肺炎球菌ワクチンにより、約70%以上の肺炎球菌感染症に対する抗体ができます。2013年11月から小児用肺炎球菌ワクチン(13価)が新しく販売、接種可能となりました。このワクチンは、特に2013年10月までの7価ワクチンに比べ6価(1、3、5、6A,7F,19A)の血清型が追加されました。特に19Aは最近、増えている髄膜炎菌の血清型です。ですから小児用肺炎球菌ワクチン(13価)の導入により、より広範な血清型に対する予防効果が期待できます。
なお、ワクチンは生後2ヶ月以降の乳児に、ヒブワクチンなどとの同時接種にて、1ヶ月間隔で3回接種し、追加を1歳1カ月頃、ヒブ、小児用肺炎球菌、四種混合ワクチンの3つのワクチンの同時接種がおすすめです。ただし、初回の接種年齢などにより、接種の方法に多少の違いがありますのでご相談ください。ところで、今まですでに4回の小児肺炎球菌ワクチン(7価ワクチン)が済んでる子供さんも自費にはなりますが、わずか1回だけ小児肺炎球菌ワクチン(11価ワクチン)の接種をすれば11価の抗体ができて予防ができます。ぜひとも追加の接種をお勧めします。詳しくは診察時にお尋ねください。副作用としてたまに発熱がありますが自然に解熱します。心配なときは受診ください。
2011年2月1日から小児肺炎球菌ワクチンは公費での接種が可能になっています。
・小児用肺炎球菌ワクチン、ヒブワクチンの同時接種についてはコチラ
⑬子宮頸がん予防ワクチン
毎年、1万5千人の女性が子宮頸がんと診断され、2500人もの死亡者を出しています。
特に20歳から40歳の女性がガンで死亡する場合の第2位になっています。
子宮がんはヒトパピロ-マウイルス(HPV)によるものです。そのウイルスによる予防ワクチンが2009年12月末より販売されました。このワクチンを接種することにより約70%の子宮頸がんの予防が可能です。
また、10歳以降の小児(セクシャルデビュー前)からの接種が可能であり、大きな予防効果が期待できます。
今後は、ワクチン接種とがん検診のふたつで子宮頸がんを予防することが最善の方法と考えられます。
2013年4月以降は小学6年生から高校1年生まで公費接種となりました。
⑭ロタウィルスワクチン
ロタウイルスワクチンは、いままで対処療法でしか対応できなかったロタウイルス胃腸炎を2回の経口接種で予防することができるワクチンです。
ロタウイルス胃腸炎は、感染性胃腸炎の一つであり、乳幼児に多くみられます。
生後6か月から2歳ぐらいまでにかかることが多く、年間約80万人が罹患し、その1割程度が入院、年間約10人が死亡しています。
この胃腸炎は5歳までにほとんどの子供が罹患します。
生後3か月過ぎくらいに初めて感染すると重症化しやすく、激しい嘔吐や水様性の下痢を繰り返すために急速に脱水症状を起こしてしまいます。特に保育園や幼稚園などの集団生活をしている場合は一人の感染した乳幼児からあっという間に数十人の乳幼児に広がることも珍しくはありません。
特別な治療はなく、十分な水分と塩分の迅速な補給が大切です。ひどいときは入院点滴をしたり、合併症としての脳炎や脳症を引き起こします。
ロタウイルスは流行のウイルスの型が変化するため一人の子供が何回でもロタウイルスに感染してしまうという問題があります。このような感染力の強いロタウイルスに対してWHOではすべての国に対してロタウイルスワクチンの定期接種を推奨しています。現在では120か国以上の国でロタウイルスワクチンの接種が行われています。
ロタウイルスワクチンは、生後6週から接種を開始し、一か月後の10週にて完了するのが理想です。遅くとも生後6か月までに完了することが必要です。
現在、認められているロタウイルスワクチンは接種期間の限定があります。5歳までにほとんどの子供が罹患すると考えると、今後、治験が進み、生後6か月以降の乳幼児もできるようになればよいと思われます。
どういう順序で受ければいいの?
下記は予防接種スケジュールの一例です。
人によりスケジュールは異なります。スケジュール・接種間隔・同時接種については診察にてご相談ください。
なお、1歳までの予防接種の最短最速スケジュールは下記の通りです。
生後2ヶ月:ロタ、ヒブ、肺炎球菌、B型肝炎ワクチン
3ヶ月:ロタ、ヒブ、肺炎球菌、B型肝炎ワクチン、四種混合ワクチン
4ヶ月:ヒブ、肺炎球菌、四種混合ワクチン
5ヶ月:BCG,四種混合ワクチン
8か月:B型肝炎ワクチン
・KNOW-VPD(VPDを知って、子供を守ろうの会)の予防接種スケジュール、または、
日本小児科学会の予防接種スケジュールも参考にして下さい。
・スマートフォンで予防接種の方法やスケジュールを管理できる便利な無料アプリのダウンロードは、コチラをご参照ください。
以下は、当院おすすめのスケジュールです。
⇒ 生後2ヶ月
a.B型肝炎ワクチン(HBV)1回目
b.ヘモフィルスインフルエンザ菌B型ワクチン(HIB)1回目
c.小児用肺炎球菌ワクチン(PCV13)1回目
d.ロタウイルスワクチン 1回目
⇒ 生後3ヶ月
a.ヘモフィルスインフルエンザ菌B型ワクチン(HIB)2回目
b.小児用肺炎球菌ワクチン(PCV13)2回目
c.四種混合1期1回目
d. B型肝炎ワクチン(HBV)2回目
e. ロタウイルスワクチン 2回目
f. 不活化ポリオワクチン(IPV)1回目
⇒ 生後4ヶ月
a.ヘモフィルスインフルエンザ菌B型ワクチン(HIB)3回目
b.小児用肺炎球菌ワクチン(PCV13)3回目
c.四種混合1期2回目
⇒ 生後5ヶ月
a. 四種混合1期3回目
b.BCG
⇒ 生後8ヶ月以降
a.B型肝炎ワクチン(HBV)3回目
b.日本脳炎ワクチン1回目
c.日本脳炎ワクチン2回目
⇒ 1歳
a.麻疹・風疹混合ワクチン(MR)1回目
b.水痘ワクチン1回目
c.流行性耳下腺炎ワクチン1回目
⇒ 1歳1ヶ月以降
a.ヘモフィルスインフルエンザ菌B型(HIB)追加
b.小児用肺炎球菌ワクチン(PCV13)追加
c.不活化ポリオワクチン(IPV)4回目
d.三種混合ワクチン(DPT)追加
⇒ 1歳3ヵ月以降
水痘ワクチン2回目追加
⇒ 3歳以降(日本脳炎をやってない場合)
a.日本脳炎ワクチン1回目
b.日本脳炎ワクチン2回目と流行性耳下腺炎2回目の同時接種
⇒ 4歳以降
a. 日本脳炎ワクチン追加
⇒ 5歳になったら(年長)
a.麻疹・風疹混合ワクチン(MR)2回目
b.4種混合ワクチン5回目
⇒ 9歳頃
日本脳炎ワクチン2期
⇒ 11歳頃
二種混合
⇒ 12歳頃
子宮頚ガンワクチン3回接種(0か月、1か月後、6か月後)
予防接種を受けた場合に注意することは?
なるべく早めに帰宅し、激しい運動はさけましょう。
とくに身体に異常がなければ、入浴はかまいません。ただ、接種した部位はこすらないようにしましょう。
接種部位は、清潔にしておきましょう。
接種後1ヶ月は、抜歯や緊急性のない手術はやめましょう。
もし次のような副反応が出て、症状の強い場合は、すぐに受診して下さい。
①3種(2種)混合・風しん・日本脳炎・インフルエンザ・みずぼうそうワクチン・HIB(ヒブワクチン)・肺炎球菌ワクチン
接種部位が赤くはれる
頭痛、発熱、発疹などの症状がでる
1~2週間後に接種部位がしこる
②はしか及びはしか風しん混合ワクチン
接種後、5~14日(主に7~12日)の間に、だるさ、不機嫌、食欲不振、発熱、発疹などの症状がでる
③おたふくかぜのワクチン
接種後、2~3週間で、高熱、吐き気などの症状がでた場合は、無菌性髄膜炎の可能性が高いので受診してください。
④不活化ポリオワクチン
不活化ポリオワクチンの説明ページをご参照ください。